
airbnbを経営してみたいと考えている方、すでに経営している方、いずれも本業であれ副業であれ収入を増やすためにはゲストからの評価・評判が部屋の稼働率を左右します。そして、人気の部屋をもつホストになれば当然、宿泊数も増え大きな収入につながり、airbnbでどんどん稼ぐことができるようになります。ところが、その人気を揺るがしかねない問題があります。それは「近隣からのクレーム・苦情」です。
そこで今回は、
- ・どんなトラブルが物件では起きているのか?
- ・なぜトラブルは起こるのか?【原因】
- ・トラブルを起こさないためには【未然に防ぐ】
- ・トラブルが起きた時はどうする?【対策】
などについて書いていきます。
民泊自体が新しく文化として定着していない日本では、見知らぬ外国人が自身の居住するマンションに出入りする姿や空き家、空き部屋だと思っていたところに出入りする姿は確実に不安感を与え、時には住民が行政や警察へ相談を持ちかけることがあります。そうなると営業そのものを中止するか、airbnbとして使っている部屋が強制退去されるの可能性も出てきます。
そんな事にならないために、苦情が行政や警察に持ち込まれる前に対応するにはどうすればいいのか、もしも苦情が出たらどう対処すればいいかを中心に考えてみたいと思います。
1、どんなトラブルが物件では起きているのか?
(1)民泊に使われるマンションのトラブルとしてゲストが共用スペースを占拠!
マンションによっては住民の友人知人などが利用できるゲストルームというものがあります。その共用スペースが最近、混雑していて予約が取れなくなったことに疑問を感じた住民が、注意して観察すると最近出入りする外国人の姿が増えたことに気づいたのです。
そこで、気になってAirbnbのサイトを確認すると、自分のマンションが登録されていることに気付いたのです。そして管理会社へ通報し数カ月後にはこれまでどおり共用スペースの使用ができるようになりました。
これは大型マンションに住民が使うために設置されたゲストルーム(居住者の知人などが遠方から来るときに使えるようにしている部屋)の予約が取りづらくなって不審に思った住民がairbnbのサイトで確認したら、自分のマンションのゲストルームが載っていたという事例です。
(2)airbnbのゲスト(宿泊者)による騒音
バックパッカーなど人との交流を重視する旅行者の多い外国人はアルコールを飲んで騒ぐ人もいます。部屋や公道で騒ぐ、公園で騒ぐ、民泊マナーというよりは宿泊時の契約を守っていないように見えます。このような場合は物件の細かいルールを作るべきでしょう。一番多い民泊のトラブルは、とにかく「うるさい」のです。これは深夜早朝を問わず出てくる騒音のトラブルです。
airbnbの部屋に宿泊するゲストが夜遅くまで道路やベランダで騒ぎ、酒を飲んで夜中まで徘徊し、音楽を鳴らして騒音トラブルとなっています。実際にトラブルを経験すると警察やairbnbの運用代行会社等がしっかりゲストを管理をする必要性を感じます。
民泊に宿泊する外国人が大音量の音楽を流し、ベランダやマンションのエントランスで騒いでいるために睡眠不足になり、警察に通報して静かにしてもらうように対応してもらったという事例がたくさん良くあります。。
私たちは自分たちが日常的に生活している場所に数十人単位の外国人や旅行者の姿を見ることで圧迫感や違和感を感じます。
積極的に話しかけてくる外国人は悪気はなく日本人とコミュニュケーションを取りたい人もいますが厄介です。自分の国の流儀を通す人もいます。観光地でないところでは近隣住民が外国人に対して「ここで何をしているのか?」などという会話から始まり、トラブルに発展することもあります。
airbnbの物件の近隣に住む住民は、結局自分一人では何も対処できないので管理会社へ通報したそうですが、管理会社も対処できないと言ってきたことから、仕方なく警察へ通報したそうです。民泊は周辺住民には何のメリットもなく早く対策をしないと不満が大きくなります。注意したくても外国語が話せませんし、相手にしてくれないので対応ができません。近隣住民は騒音やルールを無視したごみ捨てを我慢するしかないのです。
2、なぜトラブルは起こるのか?【原因】
では、どうしてこのようなトラブルが起こるのか。参考になる調査結果があります。京都市では「民泊」が急増し当然のように近隣とのトラブルが増加している状況を考慮して、その実態調査を実施し報告書をまとめました。民泊の課題のとして「宿泊施設周辺の住民は不安に感じている」という項目があります。そのほか、
- ・事前に民泊の営業を行うという説明がない
- ・airbnbの物件の管理人が常駐せず、緊急連絡先も不明
- ・airbnbの営業実態がわからず、トラブルがなくても不安感や不快感を抱く
- ・騒音等の具体的トラブルが発生しているく
- ・鍵がオートロック式玄関の集合住宅で不安感を抱く傾向が強い
この結果から見えてくるのは「ホストの顔が見えない」ことに集約されそます。
出典:京都市「民泊の利用及び提供にあたって(重要)」
3トラブルを起こさないためには【未然に防ぐ】
近隣住民の「不安感」が苦情へ発展する全ての始まりです。その対策として、事前に近隣住民に対して営業説明や緊急連絡先など、事前周知を徹底し、住民が感じる不安や不快感を出来る限りなくし、同時にゲストに対しては徹底したハウスルールを提示し、使用開始時、使用中、使用終了時と適宜会いに行き、ホストとゲスト、ホストと住民の関係が「顔が見える」関係になるといいでしょう。
ゲストが騒いでいないかチェックしに行くとゲストは監視されていると思い不快に感じます。会うと言ってもチェックイン時に鍵を渡しに行き、禁煙であることや騒がないようにルールを口頭で伝えると良いでしょう。
チェックイン後であれば「何かわからないことはありませんか?」など、ホストとしてゲストが快適に過ごせるように「気持ち」が伝わることが理想です。それを怠って、住民からホストを飛び越して行政や警察への通報につながれば、賃貸で物件を借りている場合、強制退去となり運用ができなくなることを肝に命じる必要があります。
でも直接会うためには伝える英語だけもで準備していきましょう。ゲストも流暢に英語が話せる相手を望んでいるわけでもないので安心してください。実際、民泊を経営する多くのホストがバイリンガルではありません。
(1)事前に近隣住民に知らせる
これは民泊特区において言えることになります。特区以外では近隣住民に知らせることで警察に通報されたら強制退去になりかねませんので要注意です。事前に知らせると言ってもどの程度、どのような方法で行うのが良いのかということになります。先に民泊特区の条例を制定した、東京都大田区と大阪府の報告が参考になります。
①近隣住民へ知らせる範囲
- ・マンション等の共同住宅であれば、その共同住宅の部屋の使用者
- ・民泊物件の土地に隣接する建物の使用者
- ・民泊物件の土地の境界から道路、公園を挟んで10メートル以内の建物の使用者
これは民泊国家戦略特区の条例を制定している大阪府の例ですので、よくわからない時には宿泊施設の管理を行っている、市町村の保健所が相談窓口です。しかし、本音として法整備が完了する前は民泊はNGですので近隣住民にお知らせることはおすすめしません。
②民泊国家戦略特区で民泊を行う場合、何を説明するのか
- ・民泊の許可を受けようとする者の氏名(法人にあっては名称及び代表者氏名)
- ・施設の名称及び所在地
- ・事業の概要
- ・苦情等の窓口の責任者の所在地、氏名、連絡先
- ・廃棄物処理法方法
- ・火災等の緊急事態が発生した場合の対応方法
周知方法としては民泊国家戦略特区の大阪府でも東京都大田区でも「書面にしてポスティング」すればいいことになっていて、住民説明会までは必要ないと考えているようです。
出典:東京都大田区「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営営業に関するガイドライン」
出典:大阪府「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営営業に関するガイドライン」
出典:内閣府「外国人滞在施設経営事業の円滑な実施を図るための留意事項(内閣府)」
(2)トラブルを防止するために物件のハウスルールを作る
次に大事なのが、利用する側「ゲスト」の問題です。ゲストとホストの関係です。ゲストに守ってもらいたいルールをきちんと周知徹底しておくことで、トラブルの未然防止と万一発生した際には「事前に警告していた」ということが言えます。ではどんな内容が必要なのでしょうか。
①「靴棚」「トイレ」「キッチン」「冷蔵庫」「ゴミ捨て」の各項目の使い方を説明します。
いずれも国による生活習慣の違いから生まれる行き違いを防止することが目的です。特にゴミ捨てについては、近隣住民とのトラブルの上位に入る項目ですから、分別や廃棄場所など具体的な廃棄方法を記載すべきです。行政の指導を見ていると、ゴミの処理については、マンション住人とは別に「事業ごみ」として処理するのがベストのようです。
可能であればベランダなどに大きめのフタ付きのゴミ箱を2つ用意して「可燃物」と「不燃物」に分別してもらうといいでしょう。ゲストは悪気がなくてもゴミ箱が1個しかないのであればそこに可燃と不燃を両方捨てるしかありません。また分別しない習慣の国から来たゲストはそもそもゴミを分けて捨てる習慣がないのでハウスルールとして物件に紙で印刷したものを置いておくといいでしょう。
②ゲストとして最低限守ってほしい項目をまとめる
ゲストに最低限守って欲しい第1位は喫煙の問題です。苦情の事例でもあるように、室内禁煙は記載されていたが、ベランダまでは書いていないのでOKとして、ベランダで喫煙するという事例が多くあるようです。見知らぬ外国人がベランダで喫煙する姿を見た住民が火災などの不安を覚える可能性は高いからです。さらに「ペットの持込」も必要ならば禁止ですと予約の段階でペットNGと記載します。
③必要(現地の事情)に応じて書いておきたいルール
特に騒音についは、近隣とのトラブルを避けるために「夜9時以降の騒音には気をつけてください」などの記載が必要です。日本は安全だという意識で防犯上の注意を怠る可能性もあるのでドアの施錠や出入りの際の鍵の管理を徹底するように書いておきます。そうすることで留守の間に持ち物がなくなったとか、鍵を紛失したなどのトラブルを未然に防ぐことができます。
以上が主なものですが、住民トラブルで最も多いのが「騒音」と「ゴミ出し」です。トラブルが起きてからでは遅いのです。ハウスルールを事前に作り周知徹底することが副業として収入をアップさせる上でもとても需要です。
(3)トラブルを事前に察知する
どんなに徹底してルールを決めても、それに100%従ってくれる保証はありません。そこで活用するのが「ホストからのレビュー」です。airbnbが採用するレビューはその中には「このゲストは泊めさせないほうがいい」と忠告されている事があります。こうしたレビューを活用することで少しでもトラブルを起こさせないようにしたいものです。
それでも、トラブル発生の可能性があることから、住民側からの苦情をいち早く察知できるようにと苦情受付のページを公開したり、ホスト自身が直接ゲストと会って苦情が起きないように周知させるなどの方法を「民泊特区」でも指導事項に含めて奨励しています
①苦情報告ツール「Airbnbと近隣のホスト」を使って自分の物件を守る方法
これは民泊を賃貸物件でも戸建物件どちらでも使える重要な方法です。自分の運営する物件の近くの部屋でゲストが騒音やゴミ出しに問題があると感じた場合、いつの日か問題になり強制退去させられる可能性があります。その場合、同じ建物であれば当然民泊一斉追い出しが決行されます。これは実際に起きた事例です。
同じ建物や隣の建物の物件に宿泊する外国人がうるさいと警察に苦情が入り、民泊を運営するホストがマンションの管理会社から追い出され、その後全ての物件について調査が行われ他の部屋のホストも「とばっちり」を受けたケースです。これを未然に防ぐために近隣の民泊を行う物件に問題がある場合は、以下のサイトから報告できるのです。
Airbnb社の苦情報告ページ
https://www.airbnb.jp/neighbors
2016年5月31日から、Airbnb社が近隣住民からの騒音やゴミ出し等に関する事例を受け付けるページを公開しました。近隣住民が民泊の物件に対して懸念がある場合、このサイトを使って報告すること場合によってAirbnbの運営者であるホストに伝えるという仕組みです。住民から寄せられた苦情がどの程度ホスト側に伝わるかは、今後の運用次第ではありますが自分の物件を守る手段として使うこともできますので覚えておくといいでしょう。
②実際にゲストと会う
先に「顔の見えるホスト」が大事だと書きました。ネット上だけで対応し、全くゲストと顔を合わさずに終わってしまうことは大変危険です。利用者のほとんどは善良な人たちですが、実際に会っておくことで、信頼感を増し、問題を起こしそうなゲストや近隣住民の声を直接聞く機会もあります。「会うこと」これが大事なポイントです。
また会うことでレビューに大きな影響があります。Airbnbを使う外国人は海外の友達の家に遊びにいく感じで利用することが多いのでホスト(民泊運営者)と会うことで評価が上がります。そして最後にはもし良かったら評価の星5をつけてください。とお願いすることもできます。一度会った人に対して同じ人間として評価1はつけづらいという心理がありますので「会う」ことは大切です。
特に欧米諸国のゲスト(宿泊者)はホスト(民泊運営者)と会うことを喜びます。逆にアジア圏のゲストは会いたがらない傾向があります。
(4)今後の課題(厚労省の新ルール)
厚労省は2016年6月には有識者による会議で民泊サービスの新ルールをまとめています。その中で住民とのトラブルを避ける方策として次の4点が盛り込まれています。
- ・利用者名簿の作成や備え付け
- ・宿泊者に対する注意事項の説明
- ・近隣住民などからの苦情の受付
- ・表札設置
将来的にこれらが制度化されることは十分予想されます。これから副業として民泊事業を始めるなら、こうした施策を先取りしてトラブル防止へ務めることが大事です。
4、トラブルが起きた時はどうする?【対策】
事前の対策をしっかりと行っていたが、発生してしまったトラブルは仕方がありません。トラブル対処の大前提は「誠実な対応」と「謝罪・感謝」です。トラブルが起こって、住民から直接の苦情を受け取った時はまだいいのですが、行政や時には現場から直接警察を通じて連絡を受けた時は、その対応が全てを決定すると言っても過言ではありません。
まずは出来る限り早く現場に行って下さい。ホストが直接ゲストや住民と対面で謝罪することが最も大切です。相手はホストの誠意ある態度を期待しています。ホスト自身も自らがここに住んでいるという前提で苦情を真摯に受け止めて謝罪すべきです。無理難題を言っていると思ってしまうと、相手は敏感に感じます。誠実に対応した後は、「苦情を言って来てくれたことへの感謝」を伝えます。ここが一番大事です。場合によっては、その時に苦情を言って来た人が、ホストにとっての大事な協力者となる可能性があるのです。
5、まとめ
民泊による近隣からの苦情があった時はどうすればいいかというテーマで書きました。その内容のほとんどは事前の対策です。どれだけ事前に対策ができるかで、苦情が発生するか否かが決まります。それでも発生してしまった時は、いかに誠意を持って対応するかにかかってきます。どうか、苦情を言ってくる住民がいたら、その方は自分の味方だと思って、誠心誠意対応しましょう。その住民をぜひ味方につけて下さい。それが民泊を経営するホストとしての腕の見せどころだと言えます。