民泊の価格設定でやりがちな3つの失敗──「安くすれば埋まる」は本当か?

価格と予約戦略

価格設定、正直めんどくさいですよね

民泊を運営していると、「価格設定ってどうしてますか?」と聞かれることがよくあります。

正直に言います。

私はそこまで細かく触っていません。

ダイナミックプライシングツールも使っていませんし、競合の価格を毎日チェックしているわけでもありません。

それでも、2棟の戸建て民泊を稼働率77〜80%で運営し、スーパーホストも継続しています。Airbnb上位5%の高評価もいただいています。

なぜ価格設定にそこまで時間をかけなくても回っているのか。それは「頑張っている」からではなく、「仕組みにしている」からです。

この記事では、民泊の価格設定でよくある3つの失敗パターンを紹介しながら、

難しいことはしない。でも”なんとなく”もやらない」という価格設定の考え方を整理していきます。

ちなみに、この記事で紹介するのはあくまで私のやり方であり、唯一の正解ではありません。

物件の立地やタイプ、ターゲット層によって最適な価格設定は変わります。

ただ、「仕組みとして設計する」という考え方自体は、どんな物件にも応用できるはずです。

なお、価格設定は民泊開業の中のひとつのステップです。開業全体の流れを把握したい方は、こちらの記事で全体像をまとめています。

失敗①:「1泊○○円」で決めて、それっきりになっている

相場を調べて1つの数字を決める、その落とし穴

民泊の価格設定でまずやりがちなのが、「周辺の相場を調べて、だいたい同じくらいの金額にする」というやり方です。

たとえば「近くの民泊が1泊15,000円だから、うちも15,000円にしよう」と決めて、そのまま通年で運営してしまう。

気持ちはわかります。何を基準にすればいいかわからないから、相場に合わせるのが一番安心に感じますよね。

でも、これだけでは不十分です。

民泊の需要は、平日と週末、繁忙期と閑散期でまったく違います。

1つの金額で通年運営していると、繁忙期には「もっと高くても売れたのに」と取りこぼし、閑散期には「この金額では埋まらない」と空室を抱える。

つまり、両方損する状態になりやすいのです。

価格は「1つの数字」ではなく「レイヤーの組み合わせ」で考える

実際に運営してみるとわかりますが、価格設定は「1泊いくら」という1つの数字ではなく、複数のレイヤーを組み合わせて成り立っています。

参考までに、私が実際に使っている6つのレイヤーを紹介します。

1つ目が、ベース価格と週末加算です。定価となるベース価格を設定し、金曜日と土曜日には割増料金を加えています。これが価格設定の土台になります。

2つ目が、季節繁忙期の値上げです。3月後半から4月のお花見シーズン、ゴールデンウィーク、お盆、クリスマスから年末年始といった需要が集中する時期には、定価よりも高い金額に手動で設定しています。

3つ目が、7泊以上の長期割引です。1週間以上の滞在に対して5%オフを設定しています。長期滞在のゲストは清掃回数が減るなどの運営メリットもあるため、少しお得に泊まっていただく形にしています。

4つ目が、早期予約割引です。3ヶ月以上前の予約に対して5%オフを設定しています。ただしこれは金額的なメリットというよりも、リスティングの説明文に「早割あり」と書けることの方が大きいです。この点は後ほど詳しく触れます。

5つ目が、直近1ヶ月の空室キャンペーンです。1ヶ月を切っても埋まっていない日にカスタムキャンペーンを設定して割引をかけます。日常的に手を動かしているのは、実質ここだけです。

6つ目が、メッセージ代行への値引き裁量です。ゲストから値引き交渉が入った場合、代行さんが5%オフまでなら自分の判断で金額提示できるようにしています。

「6つもあるの?」と感じるかもしれませんが、最初に設定してしまえば日常的に触るのは5つ目のキャンペーン調整くらいです。あとは仕組みが回してくれます。

ポイントは、これらを「やらなきゃいけないこと」と捉えるのではなく、「一度組んでしまえば勝手に機能する仕組み」と捉えることです。

レイヤーの数が多く見えても、設定の手間がかかるのは最初だけ。

運用が始まってしまえば、ほとんど意識することはありません。

定価は「収支予測の基準価格」より5〜10%上げて設定する

もう1つ、定価の決め方で大切なポイントがあります。

収支予測をして「この価格なら事業として成立する」という基準価格が出たとします。

この金額を、そのまま定価にしてはいけません。

なぜかというと、実際の運用では、価格が下がる場面はたくさんあっても、上がる場面はほとんどないからです。

閑散期のキャンペーン値引き、早割、長期割引、ゲストからの値引き交渉。

下方向の圧力は常にかかります。

ですから、定価の段階で「下がる余地」をあらかじめ織り込んでおくことが重要です。

収支予測の基準価格よりも5〜10%上乗せした金額を定価に設定しておく。

こうすることで、多少の値引きをしても収支の成立ラインを割り込みにくくなります。

逆に、基準価格をそのまま定価にしてしまうと、割引をかけるたびに赤字ラインに近づいていくことになります。

「値引きしたら利益が出ない」という状態は、価格設定の問題というよりも、定価の設計ミスです。

「収支が成立するライン」をどう見極めるかについては、実際の年間データをもとに別記事で詳しく解説しています。定価を決める前に、まずこちらを読んでおくと判断の軸ができるはずです。

失敗②:空室が怖くて、安易に値下げしてしまう

「埋まらない=高すぎる」とは限らない

カレンダーに空室が並んでいると、不安になります。

「やっぱり高すぎるのかな」「もう少し下げた方がいいかな」と思ってしまう気持ちは、よくわかります。

でも、値下げは最後の手段です。

予約が入らない原因は価格だけではありません。

写真が魅力的でない、リスティングの説明文がわかりにくい、レビューが少ない、立地の特徴をうまく伝えられていない。

価格以外の要因で予約が入らないケースは、実はかなり多いのです。

値段を下げる前に、まず「価格以外で改善できることはないか?」と立ち止まることが大切です。

安くすれば埋まるかもしれませんが、それは「価格で妥協した」だけで、根本的な解決にはなりません。

予約が入らない原因を「価格」だけに求めると本質を見誤ります。特にレビュー評価と期待値コントロールの関係は、価格以上に予約率に影響します。

値下げするなら「順序と限度」を決めておく

とはいえ、閑散期や直前の空室に対しては、値下げが有効な場面もあります。

ただし、なんとなく下げるのではなく、あらかじめルールを決めておくことが大切です。

私の場合は、直近1ヶ月で空いている日にAirbnbのカスタムキャンペーン機能を使って割引を設定しています。

最初は15%オフからスタートして、反応を見ながら段階的に下げていきます。

今まで最大で35%オフまで下げたことはありますが、それ以上は下げません。

なぜなら、それ以上下げると収支の成立ラインを割り込む可能性があるからです。

ここで大事なのは、「割引幅を段階的にする」ということです。

いきなり30%オフにするのではなく、15%で出してみて、それでも動かなければ20%、25%と上げていく。

最初から大きく下げてしまうと、「もしかしたら15%で入ったかもしれない予約」まで安売りしてしまうことになります。

また、キャンペーンの設定タイミングも重要です。

2ヶ月前の空室と、3日前の空室では状況がまったく違います。

私が動き出すのは1ヶ月前。それより早い段階では、まだ通常の流入で埋まる可能性があるので焦って値下げする必要はありません。

「いくらまで下げていいのか」は、感覚ではなく収支計算から逆算して決めておくべきです。

事前に下限を決めておけば、「もうちょっと下げようかな」という不安に振り回されずに済みます。

代行さんへの裁量もルール化しておく

ゲストから直接、値引き交渉が入ることもあります。

メッセージ対応を代行に任せている場合、「値引きしていいですか?」といちいち確認が来ると、対応が遅れてしまう。ゲストは複数の宿を比較検討していることが多いので、返事の早さは予約の取りこぼしに直結します。

私は、メッセージ代行さんに「5%オフまでなら自分の判断で金額提示してOK」という裁量を渡しています。

こうすることで、対応スピードを落とさずに値引き交渉に応じられます。

ただし、裁量を渡すためには「ここまでならOK」というラインが自分の中で明確になっていることが前提です。

定価の設定と収支の成立ラインが曖昧なままだと、裁量の基準も決められません。

仕組みは、土台がしっかりしていて初めて機能します。

価格設定の仕組みは、そもそも「収支が成り立つ物件」を選んでいることが前提です。物件選びの段階で収支の見通しを立てておきたい方は、こちらもあわせてどうぞ。

失敗③:一度設定したまま、振り返らない

最初の設定が正解である必要はない

価格設定は「最初に正解を出す」ものではなく、「運用しながら育てる」ものです。

完璧な価格を最初から設定できる人はいません。

実際に運用してみて、稼働率や売上を見ながら調整していく。

その繰り返しで、自分の物件に合った価格設定が見えてきます。

大事なのは、「設定して終わり」にしないことです。

早割10%から5%に変えた理由、そして5%を残している理由

私自身の例を紹介します。

早期予約割引は、最初は10%オフに設定していました。

3ヶ月以上前に予約してくれるゲストに、少しお得に泊まってもらおうという考えでした。

でも運用していくうちに、人気のある時期に10%割引で早々に予約が埋まってしまうことに気づきました。

ゴールデンウィークや年末年始など、放っておいても定価で売れるはずの枠を、わざわざ1割引で売っている状態だったのです。

「予約が入っている=うまくいっている」ではありません。

取れたはずの売上を逃している可能性がある。そう気づいてから、早割は5%に下げました。5%に下げても早期予約は変わらず入りますし、であれば割引幅は小さい方が得です。

では、なぜ5%を完全にやめないのか。

正直なところ、なくても埋まるかなとは思っています。

でも、リスティングの説明文に「早割や直前割でお得に泊まれます」と書けることに価値があると考えています。

実際の割引額は5%、金額にすると数百円から千円程度です。

ゲストの宿泊費に大きな影響を与える金額ではありません。

それよりも、「この宿はお得に泊まれるチャンスがあるんだ」と思ってもらえる印象の方がはるかに大きい。

つまり、早割は「値引き施策」として残しているのではなく、「メッセージ施策」として残しているのです。

割引の目的が「安くすること」なのか「伝えること」なのかを意識すると、施策の使い方が変わってきます。

Airbnbは季節価格の自動設定ができない──手動の落とし穴

価格設定で見落としがちなのが、Airbnbのシステム上の制約です。

Airbnbでは、ベース価格と週末価格は設定できますが、「この時期はこの金額」という季節ごとの価格変動を自動で設定する機能がありません。

つまり、ゴールデンウィークや年末年始の値上げは、自分でカレンダーを開いて手動で金額を変更する必要がある。

これ、わかっているつもりでも忘れます。

恥ずかしい話ですが、私は6ヶ月前からカレンダーをオープンしているにもかかわらず、手動で価格を変更するのを忘れて、年末年始の予約を定価のまま受けてしまったことがあります。

本来なら繁忙期価格で売れたはずの枠です。もったいなかったとしか言いようがありません。

年末年始やゴールデンウィークなどの繁忙期は、通常の2〜3割増しで設定しても予約が入るタイミングです。

その枠を定価で埋めてしまうのは、実質的に数万円単位の機会損失になります。

しかも、繁忙期の予約は早い段階で入ることが多いので、気づいた頃にはもう手遅れです。

このミスから学んだのは、「仕組みで回る部分」と「手動で対応しなければならない部分」を明確に区別して、手動の部分にはチェック体制を作っておく必要がある、ということです。

私は月初にカレンダーを確認するようにしてからは、同じミスはしていません。

「触らなくていい仕組み」と「定期的に見直す部分」を分ける

価格設定に関わるすべてを常に見張っている必要はありません。

大事なのは、「どこを、どの頻度で見るか」を決めておくことです。

私の場合は、以下のように分けています。

ベース価格と週末加算は、ほぼ触りません。

年に1回、年間の実績を振り返るタイミングで見直す程度です。

長期割引と早割は、半年から1年に一度、実際の効果を確認して調整します。

先ほど紹介した早割10%から5%への変更は、まさにこの定期見直しで気づいた改善です。

季節繁忙期の値上げは、月に1回のカレンダーチェックで対応します。

翌月以降のカレンダーを開いて、大型連休や繁忙期に手動で価格を設定する。

地味な作業ですが、ここを怠ると私のように「年末年始を定価で受ける」という痛い失敗をすることになります。

空室キャンペーンだけが、毎月の運用タスクです。直近1ヶ月の空き状況を見て、カスタムキャンペーンの設定や調整をする。

日常的にやることは、実質これだけです。

このように整理しておけば、「全部を毎日チェックしなきゃ」という精神的な負担がなくなります。価格設定は毎日向き合うものではなく、仕組みと定期チェックで回すものです。

まとめ:価格設定は「頑張る」ものじゃない

ここまで3つの失敗パターンを見てきました。

改めて整理すると、大切なのは次の3点です。

まず、価格は1つの数字ではなくレイヤーの組み合わせで設計すること。

そして定価は収支予測の基準より少し上に設定して、値引きの余地を持たせておくこと。

次に、値下げには順序と限度を決めておくこと。

感覚で下げるのではなく、ルールに基づいて判断すること。

最後に、設定して終わりにせず、定期的に振り返ること。

ただし全部を毎日見る必要はなく、「どこを、どの頻度で」をあらかじめ決めておくこと。

正直に言えば、私は価格設定にそこまで時間をかけていません。ダイナミックプライシングツールも使っていませんし、競合を毎日チェックしてもいません。

それでも回っているのは、仕組みがあるからです。

ただし、価格設定だけで売上が決まるわけではありません。

そもそも収支が成立するラインを把握していなければ、定価も値引きの下限も決められません。

また、レビュー評価が低ければ、いくら価格を下げても予約にはつながりません。価格設定は大事ですが、それ以前の土台がしっかりしていることが前提です。

収支の考え方やレビュー設計については、別の記事で詳しく書いていますので、あわせて読んでいただけると、価格設定の判断がより明確になるはずです。

価格設定は、頑張るものではなく、仕組みにするものです。そして仕組みは、一度作ったら終わりではなく、運用しながら少しずつ育てていくものです。最初から完璧を目指す必要はありません。

まずは今の価格設定を6つのレイヤーに分解して眺めてみるところから始めてみてください。

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