民泊の光熱費って、毎月いくらかかるかご存じですか?
「月2万円くらいかな」と見積もる方が多いのではないかと思います。
私自身、開業前の事業計画ではまさにその金額で組んでいました。
自宅の光熱費を基準にすれば、妥当な数字に思えたからです。
ところが実際に1年間運営してみると、最も安い月で約1.6万円、最も高い月で約4.4万円。
同じ物件、同じ設備なのに、月によって約2.8倍もの開きがありました。
年間合計は約34万円。
当初の見積もり(月2万円×12ヶ月=24万円)から約10万円もオーバーしていたことになります。
この記事では、3LDK・一棟貸し物件の2025年1年分の光熱費データをすべて公開し、なぜこれだけの変動が生まれるのかを「季節」と「稼働」の両面から分析していきます。
これから民泊を始める方、すでに運営していて「うちの光熱費は高いの?安いの?」と気になっている方、あるいは事業計画の光熱費欄をどう埋めるか迷っている方の参考になればうれしいです。
なお、光熱費と対になる「いくらで売るか」の話は、こちらの記事で詳しく解説しています。
この記事の前提:物件スペックと契約条件
まず、光熱費の金額だけ見ても「うちの物件とは条件が違うし……」となってしまうので、前提条件を整理しておきます。
物件は3LDK、約85㎡の戸建て一棟貸しです。
最大宿泊人数は8名で、ファミリーやグループでのご利用が中心です。
エアコンは各部屋に個別で設置しており、合計4台。給湯器はガス給湯を使っています。
電気とガスはまとめて契約しているため、電気代とガス代を個別に分けることができません。
この記事では「電気・ガス代」としてひとまとめにした金額と、別契約の「水道代」の2本立てで表記しています。
なお、金額はすべて税込みで、端数は丸めて記載しています。
冷暖房の運用については、基本的にゲスト任せです。
チェックイン前にホスト側で空調を入れておくといった対応はしておらず、ゲストが自由にオン・オフを操作するスタイルにしています。
つまり、光熱費はゲストの使い方にそのまま左右される状態ということです。
年間データの全体像
まず、2025年1月〜12月の月別光熱費を一覧で見てみましょう。

年間の合計は約34万円、月平均にすると約2.8万円です。
ひと目でわかるのは、月ごとの振れ幅がかなり大きいということ。
最も高かった4月の約4.4万円と、最も安かった12月の約1.6万円では、実に約2.8万円の差があります。
棒グラフの高さに波があるのに対して、折れ線グラフで示した稼働日数はそこまで極端な上下がないことにも注目してください。
このズレが、これから解説する「光熱費を左右する本当の要因」につながっていきます。
季節ごとの分析:なぜこれだけ変動するのか
ここからは季節ごとに分けて、光熱費が上下する理由を掘り下げていきます。
冬(12〜3月):暖房コストがじわじわ効いてくる時期
冬場の月平均光熱費は約2.9万円。
年間平均の約2.8万円とほぼ同じ水準ですが、月ごとに見るとばらつきがあります。
12月は約1.6万円と年間最安です。
冬なのに安いの?」と思われるかもしれませんが、これには請求タイミングのカラクリがあります。
12月の請求に反映されているのは、主に11月の使用分。
つまり、まだエアコン不要だった秋口の実績が12月の数字に乗っているわけです。
一方、2月は約3.8万円とぐっと跳ね上がります。
これは真冬のピーク使用分がこの月の請求に載ってくるためです。
1月・3月もそれぞれ約2.9万円・約3.1万円と、しっかり暖房の負荷が出ています。
稼働日数は月23〜24日で安定しているため、冬場の光熱費増は稼働ではなく、純粋に暖房コストによるものと考えてよさそうです。
春(4〜6月):年間最高額が出たピークシーズン
春は月平均約3.3万円。意外にも、年間を通じて最もコストが高い季節です。
特に4月は約4.4万円と年間最高を記録しました。
この月は稼働28日と高稼働で、連泊のゲストも多かったことが影響しています。
さらに、4月の請求には2〜3月の暖房使用分がまだ残っている可能性もあり、冬の名残と春の繁忙期が重なった結果の数字と見ています。
5月は合計約3.3万円で、光熱費の内訳を見ると水道代が約5,200円と年間最高でした。
ゴールデンウィーク期間中に日本人ゲストが多く利用されたことが関係していそうです。
海外ゲストはシャワーだけで済ませる方が多いのに対し、日本人ゲストはお風呂に湯を張る傾向があるため、水道代に差が出やすいのかもしれません。
6月に入ると気温がまだ上がりきらないこともあり、約2.3万円と落ち着いた水準に戻ります。
夏(7〜9月):冷房フル稼働でも、冬より安い
夏場の月平均は約2.7万円。エアコン4台がフル稼働する季節ですが、意外なことに冬よりもコストが低い傾向にあります。
これは、一般的に冷房よりも暖房の方がエネルギー消費が大きいことが理由です。
外気温と設定温度の差は、冬場(外気5℃→室温20℃=差15℃)の方が夏場(外気35℃→室温26℃=差9℃)よりも大きく、その分だけエアコンの稼働負荷がかかります。
エアコン4台ともなると、この差がダイレクトに電気代に反映されるわけです。
ただし9月は約3.2万円とやや高めです。まだ残暑が厳しく冷房を使いつつ、稼働も20日とそこそこあったことが重なった結果でしょう。
8月は稼働20日と夏休みシーズンにしてはやや控えめで、光熱費も約2.9万円に収まりました。
水道代は7〜8月に約4,000〜4,500円と、春のピークほどではないものの高めの水準を維持しています。
夏場はシャワーの回数が増えるのか、水道代は通年で見ても高い部類に入ります。
秋(10〜11月):エアコン不要の「ボーナスタイム」
秋は月平均約2万円で、年間を通じて最も光熱費が安い時期です。
10月が約2.2万円、11月が約1.8万円。稼働日数は10月25日・11月24日と決して低くないのに、コストがここまで下がるのは、暖房も冷房もいらない気候のおかげです。
エアコンの電気代がほぼゼロになるだけで、光熱費は一気に下がります。
水道代も10月が約1,200円、11月が約1,500円と年間で最も低い水準。
秋は宿泊需要こそ穏やかですが、コスト面では運営者にとってありがたい時期です。
当たり前といえば当たり前ですが、「エアコンを使わない月は安い」というシンプルな事実が、実データで見ると改めてよくわかります。
稼働日数と光熱費の関係:「稼働が多い=高い」とは限らない
グラフを改めて見てみると、稼働日数の折れ線と光熱費の棒グラフが必ずしも連動していないことがわかります。
わかりやすい例が10月と4月の比較です。
10月は稼働25日で光熱費は約2.2万円。
4月は稼働28日で約4.4万円。
稼働の差はたった3日なのに、光熱費は2倍の差がついています。
逆のパターンもあります。
8月は稼働20日と年間で2番目に少ない月ですが、光熱費は約2.9万円。
11月は稼働24日と8月より4日多いのに、光熱費は約1.8万円です。
稼働が少なくてもエアコンが必要な季節は高くなり、稼働が多くてもエアコン不要なら安く済む。
つまり、光熱費を最も大きく左右するのは稼働日数ではなく、「その月にエアコンが必要かどうか」です。
一方、水道代については稼働との連動がある程度見られます。
ゲスト数が多い時期(特にゴールデンウィーク)に上がり、閑散期に下がる傾向です。
とはいえ水道代の変動幅は月1,000〜5,000円程度で、光熱費全体から見れば影響は限定的です。
事業計画を組む際に「稼働率が上がれば光熱費も比例して上がるだろう」と考えるのは、半分正解で半分不正確ということになります。
エアコン使用の有無という季節要因の方が、はるかにインパクトが大きい。
ここは収支シミュレーションの精度に直結するポイントなので、ぜひ覚えておいていただきたいところです。
事業計画とのギャップ:月2万の見積もりは甘かった
正直に告白すると、開業前の事業計画では光熱費を月2万円で見積もっていました。
年間24万円の想定です。

実績は約34万円。年間で約10万円もズレていました…😥
月にならすと毎月8,000円以上、想定を上回っていた計算になります。
月単位で見ると、見積もりの2万円以内に収まったのは秋〜初冬の10月・11月・12月の3ヶ月だけ。残りの9ヶ月はすべて超過していました。
特に4月は見積もりの2倍以上の金額が請求されており、事業計画のずれを最も痛感した月でした。
「月2万円」という見積もりは、おそらく自宅の光熱費感覚で設定してしまったのだと思います。でも民泊物件は、ゲストが冷暖房を気兼ねなく使い、毎日シャワーを浴び、場合によってはお風呂も沸かす場所。
自宅とは使われ方がまったく違います。さらに85㎡・3LDKという広さでエアコン4台を同時に動かせば、自宅のワンルームや2LDKとは消費量の桁が変わってきます。
この経験を踏まえてお伝えしたいのは、3LDK規模の一棟貸しであれば、月3万円で見積もっておくと年間の実態に近いということです。
年間36万円の想定になるので、実績の34万円に対してわずかなバッファが残ります。
さらに精度を上げたい場合は、月額一律ではなく季節ごとに分けて組むのがおすすめです。
たとえば冬・春は月3.5万円、夏は月2.8万円、秋は月2万円のように設定すると、キャッシュフローの予測がぐっと現実的になります。
事業計画での光熱費の組み方を含めた収支設計の全体像は、noteシリーズ「息の長い民泊経営」で詳しく解説しています。
光熱費を下げる工夫はしていないけれど
「こんなにかかるなら、何か節約しているんですか?」と聞かれることがありますが、正直なところ、光熱費を下げるための特別な工夫はしていません。
ゲストの冷暖房をコントロールするのは現実的ではないからです。
「エアコンは控えめにお願いします」と書いたところで守られる保証はありませんし、そもそも快適に過ごしてもらうことがレビュー評価に直結します。
光熱費をケチった結果「部屋が暑かった」「寒かった」と書かれたら、その方がよほど大きな損失です。
ただ、意図せず光熱費に貢献しているかもしれないものが一つあります。防音目的で導入した二重サッシです。
二重サッシは窓の断熱性能を大幅に向上させるため、冷暖房効率が上がります。
窓は住宅の熱の出入りが最も大きい箇所と言われており、そこを二重にすることで外気温の影響を受けにくくなります。冬場の結露防止にも役立っています。
もし二重サッシがなければ、冬場の暖房コストはもっと高くなっていた可能性は十分にあります。
防音対策のつもりで入れた設備が、結果的に光熱費の抑制にも効いているかもしれない。
一石二鳥の設備投資になっていたわけです。これから物件を準備する方にとっては、防音と断熱を同時に解決できる選択肢として、二重サッシは検討する価値があると思います。
まとめ
3LDK・一棟貸し民泊の光熱費について、2025年の1年分のデータをもとに振り返りました。
要点を整理します。
年間合計は約34万円、月平均は約2.8万円でした。
季節による変動が大きく、最安月(12月・約1.6万円)と最高月(4月・約4.4万円)で約2.8倍の差が出ています。
光熱費を最も左右するのはエアコンの使用有無であり、稼働日数との相関は限定的です。
水道代はゲストの属性(日本人のお風呂文化など)によって変動する傾向が見られました。
事業計画に組み込む際は、月額一律ではなく季節ごとの変動を織り込んだ方が精度が上がります。
3LDK規模であれば、年間のバッファを含めて月3万円で設計しておくと安全です。
光熱費は売上と違って自分の努力でコントロールしにくい支出です。
だからこそ、実績データに基づいた見積もりを持っておくことが、運営を長く安定して続けるための土台になります。
「想定外の出費」を「想定内」にできるかどうかで、事業の安心感はまったく違ってきます。
民泊の収支設計についてもっと詳しく知りたい方は、noteで公開しているシリーズ「息の長い民泊経営」もぜひ参考にしてみてください。



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