先日、前職の賃貸管理会社時代の知人と話す機会がありました。
彼女は今も現役で賃貸管理の仕事をしていて、担当物件のひとつが「一部の部屋で民泊をやっているアパート」なのだそう。オーナーさん自身が民泊事業にも関心があって、複数部屋を民泊転用しているという、そこそこ先進的な取り組みをしている物件です。
でも、現場はかなり疲弊していました。
私は民泊ホスト側の人間ですが、彼女の話を聞きながら「これは、真面目に運営しているホストにとっても他人事じゃないな」と思ったので、今日はそれを記事にします。
同業批判をしたいわけではありません。ただ、一部のいい加減な運営が、民泊業界全体の風当たりを作っているという構造は、私たちホスト側も一度ちゃんと見ておいた方がいいと思うからです。
現場で何が起きていたか
彼女から聞いた話を整理すると、こういう状況でした。
1. 管理代行会社と連絡が取れない
まず、そのアパートの民泊には管理代行が入っているはずなのに、管理会社(=彼女の会社)から代行会社へ連絡しても、ほとんど繋がらない。たまに繋がっても、社内で情報共有ができていないのか、担当者が変わるたびに話がリセットされる。当然、改善もされない。
2. 現地に代行会社の連絡先が掲示されていない
これが一番大きい問題でした。物件の共用部やエントランスに、民泊運営者・代行会社の連絡先が掲示されていない。だから、他の一般入居者が何かトラブルに気づいたとき、連絡先がそこしかないので全部、賃貸の管理会社に来る。
3. 管理会社は民泊ゲストに直接注意できない
管理会社は民泊ゲストの連絡先を知りません。だから、クレームを受けても直接注意ができない。代行会社に伝えても改善されない。一般入居者からは「また昨日もこうだった」「今日もこうだった」と連絡が来続ける。完全に板挟みです。
4. 主なクレーム内容は「ゴミ」
具体的なクレーム内容の中心は、意外にもゴミの出し方・出す場所の間違いでした。騒音ではなく、ゴミ。曜日違い、分別違い、出す場所違い。日常的で、地味で、でも毎日発生する。
5. 特定の入居者からの頻繁な通報
そしてこれが一番きつい部分なのですが、一般入居者の中に民泊そのものに否定的な方が一人いて、その方から「昨日もこうだった」「今日もこうだった」と逐一連絡が来る。管理会社としては対応しないわけにもいかず、しかし改善もさせられず、本当に参ってしまっている、と。
ここから見えること①:「板挟み構造」が起きている
この話で最初に気づくのは、管理会社は構造的に逃げ場がないということです。
- 入居者からのクレーム窓口は管理会社
- でも民泊ゲストへの連絡手段がない
- 代行会社は機能していない
- オーナーは民泊推進派なので強く言いづらい
全方位から挟まれています。そして管理会社はこの状態を解決する権限を持っていない。これが一番しんどいところです。
私は元管理会社側の人間なので、この「権限はないのにクレームだけ来る」構造のしんどさは、身体感覚でわかります。クレーム電話を受けて、頭を下げて、でも自分では何も動かせない。翌日また同じ電話がかかってくる。あれは本当に消耗します。
ここから見えること②:クレームの中身は「ゴミ」という地味さ
騒音やパーティーの話ではなく、ゴミが主訴だったという点は、ホスト側として覚えておいた方がいい事実です。
私たちホストは、トラブル対策というと「騒音対策」「深夜の物音」「パーティー禁止」にばかり意識が向きがちです。でも実際に周辺住民をいちばん疲弊させているのは、毎日目に入る、生活の導線に現れる、地味な違反なんですよね。
- ゴミの曜日間違い
- 分別の間違い
- 指定場所以外に出されたゴミ袋
- 数日放置されたまま
これらは騒音と違って「一瞬で終わる不快」ではなく、数日間、視界に残り続ける不快です。そして毎週くり返される。積み重なると、騒音よりよほど強い敵意を生みます。
ハウスマニュアルで「ゴミ出しルール」を書いておくだけでは、ぜんぜん足りません。多言語での明示、ピクトグラム、写真、そして「出さずに帰ってくれ」と書く選択肢まで含めて設計する必要があります。
ここから見えること③:「一度ネガティブになった相手」を戻すのは、ほぼ不可能
「特定の入居者から毎日連絡が来る」という話。
これ、民泊あるあるであると同時に、人間関係あるあるでもあるんです。一度「この物件の民泊は嫌だ」と思ってしまった相手にとっては、その後に起きるすべての出来事が「ほら、やっぱり」の材料になります。
- 本当はたいしたことない物音も「また民泊の人が騒いでる」
- たまたまゴミ置き場に落ちてた袋も「また民泊が汚した」
- エレベーターで会った見知らぬ人も「また民泊の客か」
一度フレームが「民泊=悪」になると、中立的な出来事すら悪の証拠として認識されるようになります。これは認知の構造上、ほぼ避けられません。
だから一番大事なのは、最初の数ヶ月で”ネガティブなフレーム”を作らせないことなんです。後から取り返すのは本当に難しい。
ホスト側の私たちが、この話から持ち帰るべきこと
ここまで読んで、「自分は代行に任せてないし大丈夫」「自分の物件は戸建てだから関係ない」と思った方もいるかもしれません。
でも、私が一番お伝えしたいのはそこではなくて。
こういう運営が1件あるだけで、その地域・その自治体・その業界全体の空気が、じわじわ悪くなるということです。
- 近隣住民が「民泊=トラブル源」という認識になる
- その認識が自治体に届く
- 行政の規制が厳しくなる
- 新規許可が下りにくくなる
- 既存ホストの運営条件も厳格化される
今、全国的に民泊への規制が強まっている背景には、こういう「現場の小さな疲弊の積み重ね」があります。大きな事件だけが規制を生んでいるのではなく、管理会社に毎日かかってくるゴミの電話みたいな、地味なクレームの山が、最終的に条例や運用変更に繋がっていく。
だから、真面目に運営しているホストこそ、この構造を知っておく必要があります。 <br>
私たちホストができること、5つ
最後に、この話から私が自分ごととして整理した「やっておきたいこと」を書いておきます。
1. 近隣・管理会社向けの連絡先掲示を、物件の外から見える場所に貼る
エントランス、ポスト横、掲示板。民泊運営者・代行会社・ホスト本人、どこに連絡すれば届くのかを明示する。これ、Airbnbのリスティングに書くことではなく、物件の物理空間に貼ることが大事です。民泊を使わない人向けの情報だから。
2. ゴミ出しルールを”出させない設計”で考える
ゴミの出し方を説明するよりも、「ゲストにはゴミを出させない」方が事故は起きません。室内の専用袋で完結させる、チェックアウト時に回収する、など。現場の違反は、ルールの徹底では防げない前提で設計する方が強いです。
3. 管理代行を使うなら、”連絡が取れる”を最優先で選ぶ
豪華な機能より、連絡したら返ってくること。これが最重要です。評価レビューや機能一覧より、契約前に何度か電話をかけてみて、応答速度を自分で確かめる方が確実です。
4. 近隣に否定的な人が現れたら、”早期に”向き合う
一度ネガティブなフレームができると取り返せない、という話をしました。なので、最初に違和感を示してきた人には、初期対応で全力を出すのが結果的にいちばん安上がりです。
5. 「業界のイメージ」は自分の運営で作られている、と思っておく
少し大げさに聞こえるかもしれませんが、自分の物件の近隣住民にとっては、あなたの運営=民泊業界です。その近隣住民がどこかで「民泊ってね…」と話した瞬間、その物件の評判がそのまま業界のイメージになります。
まとめ
管理会社側の知人の話を聞いて、私が一番考えさせられたのは、「業界のイメージは、現場のいちばん地味な運営によって作られている」ということでした。
華やかな成功事例や、高利回り物件の話の裏側で、管理会社に毎日ゴミのクレーム電話がかかっている現場がある。その積み重ねが、民泊への規制を作っている。
私たち真面目にやっているつもりのホストも、ここから逃げられません。「あの物件はちゃんとしてる」と言われる個別の評価だけでは足りなくて、業界全体の信頼残高を一緒に作っていかないといけない。
そう思った話でした。
息長く民泊運営を続けていくために必要な考え方をこちらのnoteにまとめています。

コメント