「え……こんなに下がってるの?」
Airbnbの収入レポートを1年分並べた私は、画面の前でしばらく固まりました。
2026年1〜10月の売上は、前年の同じ期間と比べて約23%減。月ごとに見ると、8月は前年の半分以下でした。去年はあれだけ予約が入っていたのに、です。
こんにちは、メメです。大阪で一軒家の民泊を2軒運営しています。
正直に言うと、最初に浮かんだのは焦りばかりでした。「値下げしなきゃ」「写真を撮り直す?」「何がいけなかったんだろう」。でも、原因が分からないまま手を打っても、効いたかどうか確かめようがありません。
そこでいったん深呼吸して、売上を「1泊単価」「稼働率」「手数料率」の3つに分けて調べてみました。結論から言うと、わが家の売上減のほとんどは稼働率の低下でした。手取りベースの単価は、ほぼ前年並みを保てていました。
この記事では、次の3つをお伝えします。
- 売上が落ちたときに、原因を3つの数字に切り分ける方法
- それぞれの数字を見るときの落とし穴
- わが家の2026年を実際に分解した結果と、そこから決めたこと
売上が落ちたとき、最初にやってはいけないこと
売上が前年を下回ったとき、ついやりがちなのが次のような反応です。
- とりあえず宿泊料を下げる
- 写真やタイトルを全部作り直す
- 新しい予約サイトに一気に登録する
どれも、それ自体が悪い手ではありません。問題は、原因が分からないまま打つことです。
たとえば、本当の原因が「繁忙期の需要が減った」ことだった場合、値下げしても予約はあまり増えません。手取りが減るだけです。逆に、単価が下がっているのに写真を撮り直しても、売上は戻りません。
いくつも同時に手を打つと、何が効いたのかも分からなくなります。だからこそ、まずは感覚ではなく数字で原因を切り分けます。
売上は3つの数字に分解できる
民泊の売上は、おおまかに次の式で表せます。
手取り売上 ≒ 1泊単価 × 稼働泊数 − 手数料
稼働泊数は「稼働率 × 日数」なので、日数は毎年ほぼ同じです。つまり、売上が動く原因は「単価」「稼働率」「手数料率」の3つのどれか、または組み合わせに絞り込めます。
それぞれが下がったとき(手数料率は上がったとき)に考えられる原因を、表にまとめました。
| 動いた数字 | 考えられる原因の例 |
|---|---|
| 1泊単価が下がった | 値下げ、割引の多用、長期滞在の増加、近くに競合が増えた |
| 稼働率が下がった | エリア全体の需要減、検索順位の低下、レビューの影響、キャンセル |
| 手数料率が上がった | 手数料方式の変更、予約の種類の変化 |
この表を手元に置いて、自分の数字を一つずつ確かめていきます。
指標1:1泊単価
計算方法は2種類ある
1泊単価の出し方には、次の2つがあります。
- 総収入ベース:総収入 ÷ 予約泊数
- 手取りベース:手取り額(サービス料を引いた後) ÷ 予約泊数
Airbnbの収入レポートには「総収入」「サービス料」「合計金額(手取り)」と「予約泊数」が載っているので、どちらもすぐに計算できます。
前年と比べるなら「手取り単価」で
おすすめは手取りベースです。理由は、手数料の方式を変えると、総収入ベースの単価が見かけ上動いてしまうからです。
わが家は2026年9月から、手数料をホストが全額負担する方式(約15%)に切り替えました。そのぶん、宿泊料をやや値上げしています。このとき総収入で単価を比べると、値上げ分だけ単価が上がったように見えます。でも、実際に手元に残る金額は、手数料が増えたぶん相殺されています。
「いくらで売れたか」ではなく「いくら残ったか」で比べないと、判断を誤ります。
長期滞在が混ざると単価がぶれる
もう一つの落とし穴が長期滞在です。
わが家では2026年10月に、1軒で平均27泊という長期滞在の予約が入りました。長期滞在は1泊あたりの料金を大きく下げて受けることが多いので、その月の単価はがくっと下がります。
単価の傾向を見たいときは、長期滞在が入った月を除いて比べるか、長期滞在だけ別に集計するのが安全です。
わが家の結果
2025年と2026年1〜10月の手取り単価を比べると、次のようになりました。
- そのまま比べた場合:約9%低下
- 長期滞在のあった10月を除いた場合:約1%低下
見かけの低下はほとんどが10月の長期滞在によるもので、それを除けば単価はほぼ前年並みでした。
なお、単価の決め方そのものについては、民泊の価格設定でやりがちな3つの失敗──「安くすれば埋まる」は本当か?で詳しく書いています。
指標2:稼働率
計算方法
稼働率は次の式で出します。
稼働率 = 予約泊数 ÷(物件数 × 日数)
たとえば2軒を運営していて、30日の月に36泊の予約があれば、36 ÷(2 × 30)= 60%です。
注意点1:月をまたぐ予約
Airbnbの収入レポートは、予約ごとにどの月に計上するかが決まっています。月末から翌月にかけての予約は、どちらか一方の月にまとめて入ることがあり、月単位の稼働率にはずれが出ます。
月ごとの数字に一喜一憂せず、四半期や年単位で見ると傾向がつかみやすくなります。
注意点2:制度によって分母が変わる
わが家は2軒とも特区民泊で運営しているので、営業日数の上限がなく、分母は365日です。
一方、住宅宿泊事業法(いわゆる新法民泊)の物件は、年間の営業日数が180日までと決まっています。この場合、365日を分母にすると稼働率は最大でも50%弱にしかなりません。自分の物件の制度に合わせて、分母を決めておきましょう。
民泊の営業日数をめぐる制度は、いまも見直しの議論が続いています。最近の動きは民泊の「ゼロ日規制」とは?観光庁の方針転換をわかりやすく解説にまとめています。
わが家の結果
稼働率は、2025年の約76%から、2026年1〜10月は約60%に下がっていました。約16ポイントの低下です。
単価がほぼ前年並みだったので、売上減のほとんどはこの稼働率の低下で説明できます。原因の大部分は、ここにありました。
指標3:手数料率(方式を変えたときの見方)
計算方法
手数料率 = サービス料 ÷ 総収入
Airbnbの収入レポートには月ごとのサービス料が載っているので、総収入で割るだけで出せます。
手数料は、民泊の運営コストの一部にすぎません。清掃費や光熱費も含めた全体像は、民泊のコスト構造を完全解説|清掃・光熱費・手数料のリアルで紹介しています。

Airbnbの2つの手数料方式
Airbnbの手数料には、大きく分けて2つの方式があります。
- ゲストとホストで分担する方式:ホスト側の負担は約3%
- ホストが全額負担する方式:ホスト側の負担は約15%
後者は、ゲストに表示される金額に手数料が上乗せされないぶん、表示価格が分かりやすくなります。その代わり、ホストは宿泊料を見直して手数料分を吸収する必要があります。
わが家は9月から15%方式に変更
わが家は2026年8月から、ホストが全額負担する方式に切り替えました。レポート上の手数料率は次のように推移しています。
| 期間 | 手数料率 |
|---|---|
| 2026年1〜7月 | 約3.0% |
| 2026年8月 | 約4.6% |
| 2026年9月 | 約5.0% |
| 2026年10月 | 約8.8% |
すぐに15%にならないのは、切り替え前に入った予約が旧方式のまま残っているからです。新しい方式の予約が増えるにつれて、手数料率は15%に近づいていきます。
ここで大事なのは、手数料率が上がったこと自体は問題ではないという点です。自分で選んだ変更の結果なので、確かめるべきは「上がった手数料を吸収できているか」です。
値上げで吸収できているかを確かめる
わが家は手数料の切り替えに合わせて、宿泊料をやや値上げしました。ところが実際には、直前割引を使って入る予約も多くありました。
値上げしても、割引で同じくらい下げていれば、手取りは増えません。むしろ手数料が上がったぶん、手取りが減っている可能性もあります。
確かめ方はシンプルです。切り替え後の予約を「割引あり」と「割引なし」に分けて、それぞれの手取り単価を比べます。「値上げしたつもり」と「手取りが増えた」は別物だと考えておくと、見落としが減ります。
実例:わが家の2026年を3つの数字で分解した結果
ここまでの3つの数字を、1枚の表にまとめるとこうなります(総収入と単価は2025年を100とした指数です)。
| 指標 | 2025年 | 2026年1〜10月 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 総収入(前年同期比) | 100 | 77 | 約23%減 |
| 手取り単価(長期滞在の10月を除く) | 100 | 99 | 約1%減 |
| 稼働率 | 約76% | 約60% | 約16ポイント減 |
| 手数料率 | 約3.0% | 約3.7% | 9月の方式変更で上昇中 |
※2025年は年間の数字、2026年は1〜10月の数字です。期間が違うので、季節の偏りが少し残ります。
単価はほぼ横ばいで、稼働率が大きく下がっている。原因が稼働率にあることが、表で見るとはっきりします。
次に、月ごとの前年比を見てみます。

春の3月と5月は前年並みで、落ち込みが大きいのは6〜9月でした。
市場要因と個別要因を分ける
月別に見ると、落ち込みには性質の違う2つの要因が混ざっていました。
市場要因:6〜9月の全体的な落ち込み
2025年の4〜10月は、大阪・関西万博が開かれていました。夏場の需要が万博で底上げされていて、2026年はその反動が出ている可能性があります。ただし、これはわが家のデータだけでは断定できないので、あくまで仮説として見ています。
個別要因:8月の直前キャンセル
8月は、10泊分の予約が直前でキャンセルになりました。キャンセル料は受け取っていません。
2軒の8月の日数は合わせて62日分なので、10泊は稼働率でいうと約16ポイントにあたります。このキャンセルがなければ、8月の稼働率は約45%ではなく約61%だった計算です。8月の前年比が特に低いのは、この1件の影響が大きかったことになります。
直前のキャンセルは、空いた日程を埋め直す時間がほとんどありません。キャンセル料も入らなかったので、その10泊分はまるごと失った形です。
この分解から決めたこと
- 値下げはしない(単価は前年並みを保てているため)
- 打つべきは、稼働を戻す施策
- 直前キャンセルへの備えとして、キャンセルポリシーを見直す
- 手数料の切り替え後は、割引込みの手取り単価を毎月確かめる
原因別の打ち手
原因が切り分けられたら、打ち手もはっきりします。数字ごとに、考えられる手をまとめました。
単価が下がっていたとき
- 近くの競合物件の料金と比べて、相場から外れていないか確かめる
- 割引の設定(直前割引、長期滞在割引)が深すぎないか見直す
- 繁忙期と閑散期の料金差が小さすぎないか確かめる
稼働率が下がっていたとき
- 最低宿泊日数を見直して、短い予約も受けられるようにする
- 予約サイトを増やして、Airbnb以外からの集客を試す
- 閑散期は、長期滞在の受け入れで空いた日を埋める
稼働率が下がる原因が、物件そのものやリスティングにあることもあります。その切り分け方は「いい部屋なのに予約が入らない」本当の理由で書いています。

手数料率が上がっていたとき
- 自分で方式を変えたのか、知らないうちに変わっていたのかを確かめる
- 方式を変えたなら、上乗せした宿泊料が割引で削られていないか、割引込みの手取り単価で確かめる
直前キャンセルへの備え
- キャンセルポリシーを見直して、直前のキャンセルでも一定の金額が残るようにする
- ただし、厳しすぎるポリシーは予約の入りにくさにつながるので、稼働率とのバランスを見ながら決める
長期滞在のトレードオフ
長期滞在は空いた日をまとめて埋めてくれる一方で、1泊あたりの単価は大きく下がります。わが家の10月も、稼働率は上がりましたが、単価は大きく下がりました。
受けるかどうかで迷わないように、「この月はいくら以上なら受ける」という最低ラインを先に決めておくと判断が早くなります。
まとめ
売上が前年を下回ったら、焦って手を打つ前に、まず3つの数字に分けてみてください。
- 1泊単価:手取りベースで、長期滞在を除いて比べる
- 稼働率:自分の物件の制度に合った分母で、年や四半期の単位で見る
- 手数料率:方式を変えたなら、割引込みの手取りで吸収できているか確かめる
わが家の2026年は、売上が約23%減っていましたが、単価は守れていて、原因はほぼ稼働率でした。その中には、8月の直前キャンセルのような個別の要因も含まれていました。
分けてみると、「値下げしなくていい」「キャンセルポリシーを見直そう」と、やるべきことがはっきりします。数字は、不安を小さくしてくれる道具でもあります。
数字で判断する民泊運営を、もう一歩深く
この記事では、売上を3つの数字に分けて原因を探す方法を紹介しました。ただ、実際の運営では「何を、いつ、どの順番で見直すか」まで決めておかないと、数字を見ても手が止まってしまいます。
noteの有料シリーズ『息の長い民泊経営』では、2棟を運営してきた記録をもとに、開業から日々の運営判断までを順を追ってまとめています。各回に、集計シートやチェックリストなど、そのまま使える特典をつけています。
「感覚ではなく設計で、長く続けられる民泊にしたい」という方は、ぜひのぞいてみてください。




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